Twin's Story 8 "Marron Chocolate Time"

《5 初心者指導》

 

 夏休みが終わり、新学期が始まった。

 

 学校の生徒用玄関を出たところで、夏輝と修平は、ずっと先を歩いていた真雪に声をかけた。

「おーい、真雪っ」

 

 真雪はクラスメートのユウナとリサといっしょに振り向きもせず歩いて行く。

 

「おーいっ! そこのっ! シンプソン真雪ちゃあん!」

 リサが立ち止まり、真雪に言った。「天道くんと夏輝が呼んでるよ」

「知ってる」真雪はそのまま歩き続けた。

「何か急用みたいだよ、真雪」ユウナも立ち止まり、追ってくる二人を見て手を振って大声を出した。「なにー? どうしたの? 修平に夏輝」

「そ、そこのシンプソン嬢を引き留めてくれっ!」修平が焦ったように叫んだ。

 

 ぴたっ。真雪は立ち止まり、直立不動のまま低い声で言った。「ごめん、ユウナ、リサ、先に帰ってて」

「え?」リサが言った。

「あたしたち、邪魔?」ユウナが言った。

「逆。あなたたちはここにいない方がいい」

「は?」

「あの二人に関わると、間違いなく面倒なことに巻き込まれる。早くここから逃げて!」真雪は二人を追い立てた。「大丈夫、後で事の次第は話して聞かせるから。さ、早く!」

 ユウナとリサは慌ててそこから離れた。

 

 修平と夏輝は手を繋いで、息を切らしながら真雪を目指して一目散にやって来た。真雪は眉をひくつかせて振り向いた。「なあに? 何か用? しゅうちゃんに夏輝」

「無視してさっさと歩かないでよ。冷たいなあ……」夏輝が言った。

「あのね、」真雪はつかつかと二人に近づいた。「そんなやって二人で仲良く歩いている人たちに関わるのはごめんなの。わざと知らんふりしてたのがわかんないかな」

「へえ、気、遣ってくれてんだ」

「いや、迷惑だって言ってるの。それにしてもあなたたち、いっつも喧嘩してるくせに、いっつも一緒にいるんだね」

「ま、一応恋人同士だからね」夏輝が照れて頭を掻きながら言った。

「ごちそうさま。で、何か用だった?」

「頼まれてくれ、真雪」

 修平はいつになく妙に真剣な顔だった。

「何を?」

「『海棠スイミング』のご夫婦を紹介してくれないかな、正式に」

「え? ケンジおじとミカさんを?」

「俺たち二人、今深刻な悩みを抱えている」

「し、深刻な悩み?」

「あのご夫婦にご相談申し上げたいことがあるんだよ」夏輝もいつになく真面目な目で言った。

「い、いいけど、どんな悩みなの?」

 夏輝は上目遣いで真雪を見ながらもったいぶったように言った。「聞きたい?」

 

「言いたくなければ別に」真雪は冷たく言って背を向け、歩き始めた。

「あーっ、真雪っ、」夏輝が真雪の袖を引っ張って引き留めた。「ごめんってば。言う、言うよ」

 

 手を放した夏輝の代わりに修平が真雪の手を引いて、自転車置き場の隅に連れ込んだ。

「何、何なの? いったい……」

「俺も、夏輝も、いまだにエッチの仕方がわからねえんだ」

「なっ!」真雪は驚いて大声を上げた。「いきなり何よ!」

「キスさえまともにできねえ。もう切実だ」

「だからさ、」夏輝が真雪の耳に口を寄せた。「あのご夫婦に指南していただきたくて……」

「そ、そんなこと、頼めるわけないよ」

「じゃああんたが教えてくれる? 経験済みなんでしょ?」

「なっ! なんてことを!」

「違うの?」

「な、なんであたしが経験済みなのよっ!」真雪は真っ赤になって早口でまくし立てた。「なにを根拠にそんな!」

「だって……あんた最近すっごく可愛くなってきてるし……。ひょっとしたら彼氏がいて、毎晩のように可愛がってくれてるんじゃないか、って思ったんじゃん」

「そっ、そんな、変な想像しないでよっ! 毎晩なんて身が持たないよ!」

 

「身が持たない?」修平が真雪の最後のコトバに食いついた。

 

 真雪はとっさにしまった、という顔をして口を押さえた。

 修平は追い打ちをかけるように言った。「身が持たないって?」

 夏輝が上目遣いに真雪を見て言った。「やっぱり可愛がってもらってるんじゃん」

 修平は腕をこまぬき、にやにや笑いながら言った。「そーかー、真雪はすでに」

「気づかなかったなー。なんで内緒にしてたの? っていうか誰なの? いつから?」夏輝も目を輝かせて真雪に迫った。

「おまえのその巨乳で釣ったのか? わははは!」

 修平の言葉を遮り、真っ赤になってその顔を睨み付けながら真雪は大声で言った。「と、とにかくっ、」

「水くせえなー、俺たちにひと言ぐらい言ってくれてもよ、」

 真雪は慌てて言った。「あ、あたしのことはどうでもいいでしょ。元々あなたたちの相談なんだから」

 夏輝はにっこり笑って言った。「紹介してくれるよね? ケンジさんたちに」

 

 秘密を知られそうになった以上、もはや真雪に断る術はない。

 

 顔を真っ赤にしたまま真雪は応えた。「い、一応、訊いてみるよ、ミカさんに」

「ほんとに?」

「だめだったら諦めなよ」

「いや、そこは真雪が頼み込んでだな、」

「そーそー、ちゃんと紹介してくれなきゃ、もっと根掘り葉掘り聞くよ? あんたをかわいがってくれてるエッチの相手のこと」

「ちょ、ちょっと何それ!」

「それでフィフティフィフティでしょ?」夏輝は真雪の肩を軽く叩いて微笑んだ。

「どこがフィフティフィフティなのよっ!」

「頼んだぜ、真雪」

「良かったね、修平」

「よしっ! これで俺たちもやっと満足できるエッチができるってもんだな、夏輝」

「しゅうちゃんっ!」真雪は声を潜めて早口で言った。「露骨すぎだよ」

 

 

 9月になって、朝晩の暑さは少し和らいだとは言え、日中はまだ真夏並みの暑さが続いていた。それでも外ではツクツクボーシが鳴き交わしている。

 

 土曜日の午後。海棠家。修平と夏輝は二人揃って案内されたリビングのソファにも座らず、床に正座して頭を下げた。

「先生方っ!」

「よろしくお願いしますっ!」

 

 ミカとケンジは顔を見合わせた。

 

「いきなり何なんだ。とにかく、二人とも、ちゃんとソファに座りなさい」ケンジが言った。

「そうだそうだ。これじゃまるであたしたちがきみたちを叱りつけてるみたいじゃないか」ミカも言った。

 

 ケンジの横で真雪が困ったような顔をしてジンジャーエールを飲んでいる。

 

「じゃ、失礼します」修平が立ち上がり剣道の試合の後のように一礼すると、夏輝に手を貸し同じように立たせて、ミカとケンジに向かい合ってソファにちょこんと腰掛けた。

「君が修平か。で、こっちが彼女の夏輝?」

「そうです」

「真雪の親友なんでしょ?」ケンジが訊いた。

「はい」

「で、修平くんは健太郎の」

「はい、そうなんす。中学入学ン時から」

「何度か話は聞いたことがあるよ」

 

「で? あたしたちに何の相談?」ミカが言った。

「えー、言ってないの? 真雪」夏輝が真雪を横目で見て軽く抗議した。

 真雪は夏輝を鋭く指さした。「自分たちで言って!」

 

 真ん中に座ったケンジはコーヒーカップを口に持っていった。

 突然修平が大声で言った。「エッチの仕方を教えてくださいっ!」

 ぶぶーっ! ケンジがコーヒーを噴き出した。

「な、何だって?!」

「あたしたち、つき合い始めてもう二か月になろうってのに、まだ満足にエッチができないんです」

「このままでは、性の不一致で破局を余儀なくされてしまうんです」

 

 ケンジの横で真雪はばつが悪そうにまたジンジャーエールのストローを咥えた。

 

「そ、そんな相談のために、わざわざうちへ?」ミカが言った。「っつーか、なんであたしたち?」

「お、俺、」修平が顔を赤らめながら言った。「ミっ、ミっ、」しかし次の言葉が出てこない。

 しびれをきらして夏輝が言った。「修平、ミカさんに憧れてるんです。兼ねてから抱きたいって思ってるらしいんです」

「それにっ!」修平が顔を上げてすかさず言った。「こ、こいつはケンジさんになら抱かれてもいい、ってこないだ言ってました」

「だからっ!」夏輝だった。「あたしたちのために、あなた方が愛し合う様子を見せていただきたいんですっ!」

 

 ケンジはコーヒーカップを手に持ったまま固まって額に脂汗をかいていた。

 ミカは眉間に皺を寄せて目をつぶり、腕組みをしていた。

 

 部屋の中に沈黙が流れた。

 

 ケンジの横の真雪は丁度ジンジャーエールを飲み終えたところだった。ずるずるっ! ストローが底に残った液体と空気を同時に吸って派手な音を出した。真雪は自分が出したその音にびっくりして、静かに口を離し、グラスをテーブルにそっと置いた。

 

「つまり、」ミカが静かに口を開いた。「修平はあたしを、夏輝はケンジのハダカをこっそり覗いて興奮してたってか?」

「ハ、ハダカじゃありません。水着姿です」修平が赤くなって言った。

「いつ頃からだ? そうやって覗き見してたの」

「え? あの……」

 真雪が小さくため息をついた。「中学の時からだったよね、二人とも」

「長っ!」ケンジは呆れた。

「ずっとこっそりスイミングに通ってたのか? おまえら」

「そ、そういうことっすね……」

「あたしやケン兄に用事があるとか言って、暇があったら来てたよね、スイミングに」

「声かけてくれれば良かったのに」ケンジが言ってコーヒーカップを口に運んだ。

 

 またしばしの静寂がその時間を支配した。

 

「若者の将来を案ずれば……」ミカが顔を上げ、静かに口を開いた。

「お、お、おまえ、まさか……」ケンジは思わずミカに顔を向けた。

「仕方ない、引き受けよう」

「ほ、ほ、本当ですか?!」修平も夏輝も顔を輝かせた。

「見せてやろう。本物のセックスを」

「えええっ!」ケンジは真っ赤になって思わず立ち上がった。

 

 真雪もひどく動揺しながら修平たちと海棠夫婦を交互に見た。

 

「明日の夕方、『海棠スイミングスクール』で決行する。閉館の時刻18時きっかりにロビーに集合。いいな」

「はいっ!」二人が叫んだ。

「決行って……、本気かよー」ケンジは情けない声を上げた。

 

 

「ご、ごめんね、ケンジおじにミカさん」修平たちが帰った後、真雪がとてつもなく申し訳なさそうな顔で言った。「あたしもまさかこんなことをあの二人から頼まれるなんて、思ってもいなかったから・・・・」

「いいさ。これからの人生に必要なことだよ。ある意味」

「で、でも、俺、緊張してうまくできないかもしれないぞ」ケンジがおろおろしながら言った。

「大丈夫。そんなこともあろうかと、スクールのプールサイドを選んだんだ」

「プ、プールサイドでやるの?!」真雪が驚いて訊いた。

「ケンジはね、ちょっと変わったシチュエーションだと燃え方が違うんだよ」

「そ、そうなの……」真雪は赤面した。

「それはそうと、夏輝、どっかで見たことのある顔だったな」

「あ、俺も。俺もそう思ってた」

「それに、あの屈託のないしゃべり方……」

「え? でも初めてでしょ? 夏輝に会ったの。スクールでもあの子こそこそ隠れて見てたって言うから、ミカさんたちとは会ったことはなかったはずだけど……」

「あの子の名字は?」

「『日向(ひむかい)』。日向夏輝だよ」

 

「『日向』?」ケンジとミカは思わず顔を見合わせた。

 

「知ってるの?」

「い、いや、たぶん偶然だろうけど……」

「俺たちの大学の水泳サークルに日向っていう先輩がいたんだ。ミカの同級生」

「丁度今の夏輝みたいに明るい娘でね。あたし、とっても仲良しだったんだよ。三年で中退しちまったけど……」

 ケンジが懐かしそうに顔を上げて言った。「日向陽子がフルネーム。俺は陽子先輩って呼んでた」

「ええっ?!」

「どうした、真雪」

「彼女のお母さん、『陽子』って名前だよ」

「ほ、本当か? でも結婚してるんだろ?」

「ご主人が改姓したって聞いた」

「じゃ、じゃあ、今のは陽子の娘?!」

 

 

 明くる日の夕方18時前15分。海棠スイミングスクールのロビーに修平と夏輝は並んでそわそわしながら立っていた。

 

 ミカが入り口のドアに鍵をかけ、シャッターを下ろした。

「さてと。もうちょっと待ってて。いろいろ片付けてくるから」

「はい」

「俺たち、ここで待ってます。いつまでも」

「二階の観覧席に行っててくれる?」

「え? あ、はい。わかりました」修平は夏輝の腕を掴むと走り出し、階段を二人揃って二段飛ばしで駆け上がって行った。

 

 ケンジはプールサイドで網のついた長い竿を使って水に浮いた小さなゴミをすくい取っていた。最後のクラスが終わってすぐなので、彼は小さな競泳用水着姿のままだった。観覧席にやってきた二人は、並んで座り、その様子を見ていた。

 

「いつ見てもセクシーな身体。あたしもうくらくらきちゃう」

「俺の身体はどうなんだ? 夏輝」

「あんたを見てくらくらするのは、剣道着を着て試合をしてる時だけ。今んとこ」

「エッチの時もくらくらしてくれよ」

「しっかり見て、勉強しようね、修平」

「おう」

 

 プールとプールサイドを照らしていた灯りが一つずつ消されていった。そして天井に下げられた電灯のうち一灯だけが残され、あとは全て消灯した。プールサイドの一角の狭い範囲だけがその灯りに照らされた。丁度その灯りの下に、三畳分ほどのマットが敷かれていた。

 

 ミカがジャージ姿でプールサイドに現れた。

「おーい、修平に夏輝、どこにいる?」ミカは額に手をかざして観覧席を見回した。

「ここです、ここ!」夏輝は大きく手を振って応えた。

「おお、そこか。近くに来なよ。よく見えるように」

「はいっ!」夏輝と修平は観覧席を移動し、明るくなっているプールサイドのすぐ近くまでやってきた。

「まるで手に取るように見えそうです。よろしくお願いしまーす!」修平が言った。

 一度更衣室に消えたケンジが、スウェットの上下を身につけてやってきた。そしてミカに近づくと、小声で言った。「本当に、ここでやるのか?」そして観覧席の二人を見た。

「そうだよ。燃えるでしょ? ケンジ」

「ううむ……何と言うか……。か、かなり異常な状況だが……」

 ケンジは観覧席の下に目をやった。「しかも、見てるやつがもう一人……」

 カメラを左手に持ってそこに片膝を立てて座っている龍が、にこやかな顔で右手を小さく振った。もう一度ケンジは観覧席を見上げた。夏輝と修平は揃って観覧席から身を乗り出した。

 

 

 マットの上で、ケンジとミカは立ったまま見つめ合った。ケンジはゆっくりとミカの肩に手を置き、顔を近づけた。そうしてそっと唇を重ねた。ミカは目を閉じた。

 最初、かすかに唇を触れ合わせただけだった二人は、次第にそれを強く押し付け合い、激しく吸い始めた。時折「んっ、」とミカもケンジも小さく呻いた。ケンジとミカはお互いに口を開き、舌を絡ませ合った。そしてまた唇を吸った。いつしかミカの手はケンジの首に回され、ケンジはミカの背中に手を回していた。二人の身体は密着し、長い間情熱的にキスを続けた。

 

 

「すげー!」修平が言った。

「素敵。映画観てるみたい……」夏輝もうっとりしたように頬を赤らめてつぶやいた。

「キスって、ああやるんだな……」

「覚えててね、修平」

「でもさ、なんで二人とも服着たままなんだ? ケンジさんなんて、水着だけだったのに、わざわざスウェット着てるし」

「きっと、脱がせ合うんだよ」

「えー、そんなのかったりーじゃんか。どうせ脱いでエッチするんだろ」

 

 

 ケンジはミカをマットの上に横たえた。そしてまた二人は唇を重ね合った。キスを続けながらミカは、上になったケンジのシャツの裾から手を入れ、ゆっくりとめくり上げた。唇を離したケンジは身を起こし、そのシャツを脱いだ。ケンジの逞しい上半身が露わになった。

 ケンジはミカのシャツに手を掛けた。そして同じように裾をめくり、脱がせた。ミカはスポーティなブラジャーを身につけていた。ケンジはミカの乳房の谷間にブラジャー越しに顔を埋めた。そして手を彼女の背中に回した。すぐにぷつっ、という音と共にブラジャーが緩み、それはケンジの手によって取り去られた。

 ケンジはそのまま乳房を片手でさすり、もう片方の乳首を咥えた。「あん!」ミカが小さく叫んで仰け反った。ケンジはそうして二つの乳房を交互にさすったり乳首を吸ったりした。時折軽く唇や歯で噛んだり、指で乳首を挟み込んで刺激したりもした。その度にミカは身体をよじらせ、喘いだ。

 

 

「ああやるのか……」修平が腕を組んで大きくうなずいた。

「おっぱいいじるのって大切なんだね」

「おまえ、感じるのか? おっぱい」

「自分でやってもくすぐったいだけ。今度やってみてよ、いろいろ」

「わかった」

 

 

 ケンジはミカの乳房から手と口を離し、身を起こした。そして穿いていたショートパンツを脱いだ。黒い下着姿になったケンジはミカのズボンを脱がせた。ミカはTバックのショーツを穿いていた。

「おおっ! ティ、ティーバックっ!」修平がさらに身を乗り出し、目を剥いて叫んだ。

「かっこいいねー」

「お、俺、買ってやるから、おまえ、穿いてくれよ、今度」修平は鼻息を荒くした。

「へえ、オトコってやっぱりあんなのに興奮するんだねー」夏輝は妙に感心したようにつぶやいた。

 

 

 ケンジは下着姿のまま、ミカの脚を開き、身を重ねた。そして二人は秘部をそのままこすりつけ始めた。「う……」ケンジが小さく呻いた。ミカも息を荒くして喘ぎ始めた。

 

 

「え? あれじゃ入れられないだろ?」

「でも、二人とも感じてるね」

 

 

 ミカはケンジの背中に手を回し、口をケンジの口に押し当てた。そして激しく吸った。ケンジもそれに応え、ミカの唇をむさぼるように舐め、吸った。二人の腰の動きが激しくなってきた。

 

 二人の口が糸を引いて離れた。

「あ、あああ……」ミカが声を出した。「ケンジ……」

 

 ケンジはキスから唇をミカのうなじに這わせ、そのまま乳首、へそ、と移動させた。そしてミカのショーツに手を掛けて、ゆっくりと下ろし始めた。そのまま彼は口をミカの股間に深く潜り込ませた。「ああっ!」ミカが叫んだ。

 ミカのショーツを取り去ったケンジは、あらためてミカの脚を開き、秘部に顔を埋めた。そして舌でクリトリスと谷間を執拗に舐めた。「んあああ……」ミカが身体をよじる。ひとしきりケンジはその行為を続けた。

 

 やがてミカがケンジの頭に手を伸ばした。ケンジは起き上がった。そして膝立ちになった。

 ミカも身を起こすと、腹ばいになってケンジの腰に手を回し、黒いショーツを下げ始めた。そして勢いよく飛び出し、跳ね上がった彼のペニスを両手でそっと包み込み、さすった。ケンジは顔を上げ、目を閉じ、その快感を味わい始めた。やがてミカはケンジのペニスに舌を這わせ始めた。

 

 

「お、俺、こ、こ、興奮してきたっ!」修平が自分の股間に手を当てて息を荒げた。

「あ、あたしも……」夏輝も同じようにミニスカートの上から秘部を手で押さえた。

 

 

 ミカの口がケンジのペニスを吸い込み、唾液まみれにして、大きく出し入れをし始めた。

「あ、ああああ、ミ、ミカ……」ケンジが呻いた。

 ひとしきりその行為が続けられた後、彼はおもむろにミカの口からペニスを抜き、身体をぎゅっと抱きしめ、また熱いキスをした。そのまま荒々しく彼女を仰向けに押し倒し、ケンジは腕をマットについてミカの目を見つめた。二人ともはあはあと大きく荒い呼吸を繰り返していた。

 

「入れて、ケンジ」

「うん」

 

 ミカは脚を自ら大きく広げた。ケンジはそのままペニスの先端をミカの谷間に押し当てた。

 

「入るよ、ミカ」

「うん、きて、ケンジ……」

 

「んっ!」ケンジは小さく呻いてペニスをミカに挿入し始めた。ゆっくりと、ゆっくりとその時間を愉しむように、ミカの身体を慈しむようにケンジはミカと繋がり合った。

「あ、あああ、ケンジ……」ミカがケンジの首に手を回した。すると、ケンジは始めはゆっくり、そして少しずつ腰の動きを速くし始めた。「あ、あ、ああああ……」ミカが喘ぐ。「んんっ、んっ、んっ、」ケンジも呻きながらその逞しいペニスをミカに出し入れした。

 

「ケ、ケンジ、ケンジ! あ、あたしっ!」

「お、俺も、もうすぐ、ミカ、ミカっ!」

 

 ケンジの腰の動きに合わせて、いつしかミカも身体を大きく揺さぶっていた。二人の全身には大粒の汗が大量にまつわりついていた。

 

「ああ、ああああっ、ケンジ、ケンジっ! イ、イ、イく……イくっ!」びくびくびくっ! ミカの身体がひときわ大きく揺れた。

 

「ぐうっ!」ケンジの喉から絞り出すような呻き声。そして、

 びゅるるっ!

「ああああっ! ミカ、ミカ、ミカあっ!」

 二人の身体が同時に激しく痙攣し始めた。

 

「ケンジっ! ああああああ、イってる、あたし、イってるっ!」「ミカっ! うああああああ!」

 二人の声が広い室内プール場に響き渡った。

 

 

 修平と夏輝は同じように自分の股間に自らの手を当てたまま、二人とも口を半開きにしてミカとケンジのフィニッシュを微動だにせず凝視していた。夏輝の口から一筋の唾液が糸を引いて床に落ちた。

 

 

 汗にまみれ、大きく荒い呼吸を続けながら、それでも口元に笑みをたたえてミカとケンジは見つめ合っていた。

 

「ミカ……」ケンジは挿入したまま脚を絡め、ミカを抱きかかえて横向きになると、再び静かに唇を合わせた。

 

「ケンジ……」ミカはケンジの頬にそっと手を置いた。「気持ち良かった……。満足したよ、今日も」

「そうか。俺も……とっても良かったよ、ミカ」ケンジはミカの髪を撫でながら言った。ミカは目を閉じた。

 

 

「かっ、かっ、かっこいー……」修平がようやく口を開き、仰け反った。

「素敵っ! 素敵すぎる……」夏輝も言った。

 

 

 修平と夏輝は興奮冷めやらない様子でプールサイドに降りてきた。ミカとケンジはすでに着衣の状態に戻っていた。

 

「どうだった? 二人とも」

「も、も、もう俺、完全にお二人のファンになっちまいましたっ! サイン下さいっ!」

「あ、あたしもっ!」

「まったく、恥ずかしいったらありゃしない……」ケンジが頭を掻きむしって照れた。「人に見られて愛し合うのは、やっぱり緊張するよ」

「でも、ケンジ、いつもあんな感じだよ」ミカが言った。

「そうなんですね」

「で、何か得るものはあった?」

「そりゃもう! 得るものだらけです」

「さっきのあなた方のやり方を真似て、やってみます」

「真似するのか?」ケンジが言った。

「はい。俺、ケンジさんの服の脱がせ方や、キスやなめなめ、真似してやってみます」

「ま、ケンジの真似してセックスしてりゃ、間違いはないね」ミカが言った。

「あたしたちのエッチとは全然違ってたよね」

「もうすげーよ、俺の中のエッチのイメージが180度変わった」

 

「何だか、あたしたちもやってみたくなっちゃったね。今すぐにでも……」夏輝が言って赤くなった。横で修平も赤くなってこくこくとうなずいた。

「ここでやってみる?」

「えっ?!」

「あたしたちみたいに、ここで二人で練習してみる?」

「い、いいんですかっ?!」修平が叫んだ。

「じゃあ、今度はあたしとケンジが上から見ててもいいかな?」

「も、もちろんですっ!」夏輝が言った。「光栄です。ご覧になった後、いろいろとご意見をください。その内容を反省材料にして、後でミーティングで分析しますから。お願いします」

「お願いしますっ!」修平も頭を下げた。

「な、なんだよ、ミーティングって」ケンジが呆れて言った。

「冗談だよ、見やしないよ。二人だけで楽しみな。あたしたちスタッフルームにいるから、終わったらおいで」

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