Twin's Story 6 "Macadamia Nuts Chocolate Time"

《4 ワイキキビーチ》

 

「ワイキキビーチ!」ケンジが大きく息を吸い込んで言った。「ダイヤモンドヘッド!」

 ケンジとケネス、健太郎と龍のオトコ共4人はビーチに並んで立っていた。「ハワイ、来て良かっただろ? 健太郎、龍」

「何言ってんだ。飛行機が怖くて、行きたくないって言ってたの、誰だっけか?」

「怖いんじゃない。苦手なんだよっ」

「変われへんがな」

 

 その時、背後から真雪の声がした。「何みんなで漫才やってるの?」4人の男たちは振り向いた。

 

「マ、マユっ!」ケンジが叫んだ。「ミ、ミカ姉っ!」ケネスが叫んだ。「ミカさん!」「マユ姉ちゃん!」健太郎と龍が同時に叫んだ。

「ええな、ええな、ええな、ミカ姉、その水着、めっちゃイけてるやんか」

 

 ミカはへその部分と背中の大きく開いたモノキニ姿だった。

 

「それにマーユと真雪の水着、お揃いやんか!」ケネスが少し赤くなって二人の身体を見比べながら言った。「しかも、なかなかきわどいな」

 マユミは昨日ケンジが空港で見つけたビキニ、真雪は母親のマユミが18の時、ビーチで着ていたビキニを身につけていた。

「生きててよかったな、なあ、ケンジ……、おい、ケンジ、どないした?」

「い、いや、ちょっと鼻血が……」「ぼ、僕も……」ケンジと龍はそろって鼻にティッシュを詰めながら赤面していた。

「龍はともかく、ケンジまで鼻血なの?」ミカが腰に手を当ててあきれていった。「せっかくのハワイの海だからね、ちょっと大胆になってみたってわけよ」

「ミ、ミカさん、似合ってる、ですよ」健太郎が赤くなって言った。

「お前、日本語変だぞ、健太郎」

「ほ、ほっといてよ」

「け、結局その水着、真雪が着たんだ」ケンジが感慨深そうに言った。「嫌がってたんじゃなかったっけ?」

「ママがどうしてもこれを着ろ、ってしつこいんだもの……」真雪は少し恥じらったように言った。ケンジはその姿に、在りし日のマユミの姿をだぶらせて胸を熱くした。

 

 

「ビール買うてきたで」ケネスがパラソルの下の3人に缶ビールを手渡した。「ミカ姉には2本な」

「お、気が利くじゃないか、ケネス。ありがとよ」ミカは直ちにその缶ビールを開けてぐいぐいと飲み始めた。

 

 子供たちは海に入ってはしゃぎ回っている。

 

「いい気持ち」マユミが言った。

「そうだな。あの時の夢がかなったな」

「あの時?」ミカが2本目の缶ビールを開けながら訊いた。

 ケネスが言った。「わいら3人でな、海にいったことあんねん。高校三年の時やったかな」

「3人で?」ミカが訊き返した。「なんで二人じゃないの? ケネス、あんた邪魔だよ」

「考えてみ、ケンジとマーユが二人きりで海に行くっちゅうたら、親が不審がるやろ?」

「ま、確かにな。兄妹としては仲良すぎで、怪しまれるか」

「そういうこっちゃ」

「それで、あんたがついて行ったってわけね」

「表向きはわいとマーユが海に行くのに、ケンジが見張りでついてくる。っちゅうことやったな」

「ケネス、あんたいいカモじゃない」

「そうなんや。いっつも割くってんの、わいやねん」

「ケニーは本当にいい友達だったんだよ」マユミが言った。「あたしたちのためにボートまで準備してくれて……」

「ボート?」

「そう、二人乗りのな」ケネスがウィンクした。

「なるほどね。ケンジ、あなたたちって恵まれてたんだね、その頃から」

「本当にな……」ケンジが頭をかいた。

「ほんでその時、無人島に渡って、いつか南国の海に行きたいっちゅう話、してたんや」

「そんな気にもなるわね。いい夏じゃない。いかにも青春って感じ」

「ミカ姉さんは、18の夏はどんなだったの?」

「あたし? あたしは学校の部活で吐くほど泳がされてたよ」

「恋人とかいなかったのか?」ケンジが訊いた。

「男にはあんまり興味なかったね。高二の時、ちょっとだけつき合った男はいた。その後はゼロ。でも言い寄ってくるヤツはいたよ、何人か。全部振ってやったけどね」

「へえ」

「何だよ、『へえ』って。あたしそんな風に見えない?」

「きっとそのエッチな身体に引き寄せられてたんだな」ケンジが言った。

「こっ! こいつっ! 何がエッチな身体だっ!」

「いや、ミカ姉、わいもそう思う。何かそそられる、っちゅうか、抱きたくなる、っちゅうか……」

「へ?」ミカがケンジに殴りかかろうと振り上げた手を止めた。「そうか、ケネス、やっとその気になってきたか」

「い、いや、一般論やで、あくまでも一般論」

 

 ケンジがマユミに囁いた。「やっぱりミカってその気なんだ」

「お酒のせいじゃないの?」マユミは呆れたように笑った。

 

「父さ~ん」龍が4人のもとにやってきた。

「どうした龍、情けない声で……」

「僕たち、なんだか注目されてるよ」

「注目? 誰に」

「若い女の子」

「知り合いか?」

「外国人に知り合いなんかいないよ」

「なんでまた……」マユミも言った。健太郎と真雪もやってきた。

「きっと俺たちの水着が目立つんだな」健太郎が言った。健太郎も龍も肌に食い込むような小さなビキニの水着を穿いていた。「俺たちぐらいしかいないよ。こんな水着着てるの」

「確かに、」ケネスは周りを見回した。「わいたちぐらいやな、こんなセクシー水着着てんの」

「あなたたち、似合うからよ」マユミが目を細めて言った。「立派な身体になってるから……。外国人の女の子の心を鷲づかみにできるなんて、すごいじゃない」

「しっかし、健太郎ってホントにケンジにそっくりだな」ミカが言った。

「だよね、高校二年の時のケン兄と瓜二つ」マユミも言った。

「おまけに龍も父親を小型にしたような風貌だしな」ミカは腕を組んで少し考えた。「よしっ! おまえら、ちょっとそこに立て」

「え?」健太郎が言った。

「海をバックに記念写真撮ってやるから。ほら、ケンジが背後、その前に健太郎、そして一番前に龍。さっさと並べ」

 

 ミカは三人を立たせた。

「おお~!」ケネスが唸った。「こうして見ると、ほんまにそっくりや」

「確かにそっくりだね、見事に」真雪も言った。

「ケンジ親子のマトリョーシカ人形ってか。わっはっは!」ミカは豪快に笑ってシャッターを押した。

 

「さて、次はあなたたちよ、マユミ、真雪」

「え? あたしたち?」

「同じように立ってみなよ」ミカが促した。輝く海を背にして、真雪が立ち、その後ろにマユミが立った。

「おお~!」ケネスがまた唸った。「これもなかなかやな」

「よし、笑えっ!」マユミと真雪は同じような笑みを浮かべた。ミカはシャッターを押した。

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