《1.海棠 ケンジ》

 

神父尊「最初のゲストはやっぱり主人公のケンジ君です。どうも、わざわざおいでくださりありがとうございます。さあ、かけてかけて」

ケンジ「あ、どうも。失礼します」

神父尊「さて、ケンジ君、お話が完結しましたが、いかがでしたか?主人公としての感想をお聞きできれば」

ケンジ「そうですね、まず読んでくださった方々に心から感謝したいです。しかし僕のラブシーンがいっぱいあって、かなり恥ずかしいモノもありました。神父尊さん、一体僕のラブシーンはどれくらい、」

神父尊「はい。君がかかわっているラブシーンは全編で27」

ケンジ「(驚いて)そ、そんなに?!」

神父尊「そりゃあなた、これはアダルト小説ですから。ラブシーン抜きで小説を書くわけにはいかないでしょ。えーっと、内訳はね・・・・、」

ケンジ「ええっ?内訳?」

神父尊「そう、内訳。やはりあなたの永遠の恋人マユミさんとの濡れ場が21シーン、奥さんのミカさんとは2シーン、先輩の陽子さんとが1回、アヤカさんと1回、そしてケネス君と2回。夢の中を含めてね。意外に少ないのがミカさんとのラブシーン」

ケンジ「確かに・・・・」

神父尊「でもまあ、これは文章として表現された部分ですからね、私生活ではもっと頻繁に愛し合っているんでしょ?もちろん」

ケンジ「はあ、まあ・・・・。」(赤くなっている。)

神父尊「その数多のラブシーンの中で、印象に残っているのをいくつか聞かせてください」

ケンジ「そうですね、やっぱり19の時、マユとの最後の夜

神父尊「ああ、あれは僕も泣けました。書きながら涙が溢れてしかたありませんでした。一人の読者からも『泣きました』というメッセージを頂きました」

ケンジ「そうなんですね」

神父尊「あのエピソード5は、いわゆる第一期の最後の話です。エピソード1から君たちの甘い時間をたっぷり書いてきて、その中で、僕自身君たちに強く感情移入してしまっていましたから、わかっていても君たちの最後のシーンは書いていてとても切なかったです」

ケンジ「でも、僕とマユを結局離ればなれにはなさらなかったですよね」

神父尊「そうなんです。軟弱モノと言われても仕方ないですけど、君たちを永遠に引き離すことは、どうしてもできなかったんです。所詮作り話だと割り切って、兄妹だろうがなんだろうが結婚させればいいじゃないか、とも思いましたが、さすがに常識的に考えてそれはまずい。だったら、君たち二人には将来を約束する伴侶を別に用意しなければならない。そして君の場合だと妻のミカさんといわゆる恋人のマユミさんとどちらも抱いて愛し合える理由を考えなければならない。そこんとこが実に難しいところでした」

ケンジ「ありがとうございます。そんなに気を遣っていただいていたなんて・・・・」

神父尊「とんでもない。でも、そうすることで、第二期のバラエティに富んだエピソード群を新たに紡ぎ出すことができたわけですから、結果的には良かったと思います。あのまま君とマユミさんが結婚していたりしたら、あそこまでの展開はなかったでしょうからね」

ケンジ「確かにそうですね。キャラクターも増えたし。でも、思うんですけど、神父尊さんの書くラブシーンは、どれもあまり直接的な表現ではないですね」

神父尊「いいところに気づいてくれました。そうなんです。世の中にはいろんなコトバがあって、セックスや性器を表す言葉もたくさんある。そしてアダルト小説にそういう言葉を出さないわけにはいかない。でも、なんか、巷の飢えたオトコがセックスの時に女性に言わせたがるような卑猥なコトバを出すのには、かなり抵抗があります。まあ、軽めで言えば『ハメる』とか、『チ○ポ』とか、『ワレメ』とか、そうそう『ケツ』なんていうコトバも僕は使いたくない」

ケンジ「そういう言葉って、何だかオトコのいやらしさを感じますね。確かに」

神父尊「もちろん、官能小説、アダルト小説ですから、そういう言葉が文章の中に散りばめられている方がいい、という読者の方が多数派だと思います。でも僕は無理。そういう表現を使ってマジョリティに迎合するのは、ポリシーに反するんです。ちょっと大げさだけどね」

ケンジ「なるほど。となると、当然、物語の登場人物の性格や行動原理にも影響しますよね、そういうことって」

神父尊「そうなんです。だから君たちが愛し合う時に『言葉責め』によるプレイは皆無です。第一、そういうことに僕は全く興奮しないし興味もありません」

ケンジ「言葉責め、と言いますと?」

神父尊「『言ってみろ、おまえのどこに何を入れて欲しい?あん?』『ああ、あたしの○○○にあなたの×××を入れて!』『そうか、そんなに俺の×××が欲しいのか、そこまで言うならおまえの○○○に×××をぶち込んでやる!』なんていうシチュエーションには全く萌えません。そもそもこんな『○○○』や『×××』などという直接的な言葉を使う気など全くありません。ですからこういう言葉があなたを始め、このシリーズの登場人物から発せられることはありません。それも僕のポリシーと言ってもいいでしょう」

ケンジ「ありがとうございます。僕らの品格をそれで保って頂けているんですね」

神父尊「ああ、もちろん、そういう淫語がふんだんに出てくる小説を否定するわけでもないし、そういった表現をされる作者を下に見ているというわけでもありません。それは作者、読者の嗜好・好みの問題ですから」

ケンジ「そうですね」

神父尊「そんなわけで、この小説は分類すれば『女性向き』になります」

ケンジ「女性向き、ですか?」

神父尊「小説の投稿サイトなんかで、小説をアップする時に、チェックマークを入れて選ばなきゃいけないことがあるんですよ。女性向きか男性向きかって」

ケンジ「そうなんですね」

神父尊「でも、それって無理があると思いませんか?」

ケンジ「確かにそうですね。同じ女性でも、読みたくなる内容や表現は違うでしょうしね」

神父尊「その通りです。男性主導で征服感あふれるセックスが男性向きなのかな。オトコを拘束して無理矢理イかせるのは女性向き?キスが優しくて、とろけるように愛してくれるようなシーンは女性向き?そういうシーンを好む男性もいるはずだと思うんですよね。そもそも僕はあまりそういうことに拘って書いているつもりはないんです。それに、この話に登場する男性はほぼ全員がビキニの下着を穿いています」

ケンジ「例外は修平君ですね」

神父尊「そう。それでも彼もタイトなローライズボクサーショーツを穿いてくれている。こういう下着のシュミに関して、一般的な男性や女性はどう思うのでしょう。僕はケネス君と同じバイセクシャルですから、男性がビキニを穿くのはとてもスタイリッシュで魅力的だと思っている。でも、世の中の人々はそう思わないかも知れない」

ケンジ「結局一人一人の好みは違うってことですよね」

神父尊「そうです。だから読者に合わせて、読者の望むシチュエーションや言葉遣い、人間関係を意識して書くことは、のっけから放棄していました」

ケンジ「それでいいと思いますよ」

神父尊「だから、この一連の小説で描かれているさまざまなセックスのスタイルや人々の性格、考え方は、ある意味僕の理想の世界。僕が興奮するシチュエーション、僕がうっとりするセックススタイルを書き続けてきたのです」

 

ケンジ「僕のお気に入りのシーンがいくつかあります」

神父尊「ほほう、それは?」

ケンジミカが肉まんを持って僕を慰めにくるシーン。あれはとっても素敵です」

神父尊「うんうん。あれは僕も好き。ミカさんの頼り甲斐のある性格が炸裂してますよね」

ケンジ「それから、何度も話題になっている僕とミカとの初めてのセックスシーン

神父尊「あれも絶妙。君の慌てぶりが実に微笑ましい」

ケンジ「神父尊さんは、さっき僕らの最後の夜のシーンに涙された、って仰ってましたけど、他にもぐっとくるシーンがおありですか?」

神父尊「泣いたシーンは他にもいっぱいあります。例えば君とケネス君がマユミさんを賭けてプールで競ったあと、君が叫ぶ『諦められない!諦められるわけがないだろ!』の台詞。そしてその後の暖炉前でのマユミさんのケネス君に向かって言う言葉『絶対どっちか選ばなきゃいけないのかな……。もう一人を好きなままでいること、許されないのかな……』」

ケンジ「やっぱりあの話は僕らにもつらいシーンが多かったです」

神父尊「君たちの子どもの代、つまり第二期の話では、エピソード10、真雪ちゃんにはホントに辛い思いをさせてしまいました。彼女が取り乱して泣き叫ぶシーンは、僕も一緒に何度も泣きました」

ケンジ「でも、龍も真雪もしっかり立ち直ってくれたので、僕たち親もほっと安心したところです。ちゃんとゴールインしてくれましたし、最後には子どもも生まれましたからね。しかも双子」

神父尊「僕がこの一連の小説シリーズの頭に『Twin's Story』をつけたのは、『双子』というのを大きな一つのテーマにしたかったからなんです」

ケンジ「なるほど」

神父尊「最初、書き始めた時に、双子の兄妹が愛し合うのって興奮するよなー、みたいなノリだったんですけど、話を進めていくうちに、それだけでは描ききれないこともある、でも、さっきも言った通り君とマユミさんの関係を最後まで切るつもりはなかったので、それならば、君たちの子どもの世代にも双子の兄妹を登場させて、別の絡ませ方をするのもおもしろいかも、って思った。それが第二期の5つの話です」

ケンジ「確かに第二期の話は、第一期のに比べると拡がりがありましたね。主人公も増えたし」

神父尊「はい。とても個性豊かな登場人物で、僕も書いていてとても楽しかったです」

ケンジ「みんなそれぞれの鞘に収まって、円満にエンディングを迎えましたね」

神父尊「はい。それも第一期で君たちが育んでくれたこの世界の雰囲気のお陰だと思っています。どうもありがとう」

ケンジ「こちらこそ」

神父尊「長々とお付き合い、ありがとうございました。また遊びに来てくださいね」

ケンジ「はい。それじゃ」