Twin's Story 7 "Milk Chocolate Time"

-第1章 3《成長》-

 

 週明けの月曜日。龍は朝早く起き、ダイニングに降りてきた。「おはよう、母さん」

「お、起きたか、龍」

「父さん、おはよう」

 

 新聞を読んでいたケンジは顔を上げ、龍を見て微笑んだ。「おはよう」

「心配かけてごめんね。それに、」龍は朝食の並べられたテーブルに向かって座り、キッチンに立っているミカに顔を向けた。「いろいろ心配してくれて、ありがとう」

「正直なところ、」ミカが焼き上がったトーストを運んできて、テーブルに置きながら言った。「このままお前が学校に行かない、ってことになったらどうしよう、って真剣に悩んでたんだぞ」

「大丈夫。もう大丈夫。マユ姉と三日間いっしょにいたら、すっかり回復した」

「お前、真雪といっしょにいて、何してたんだ?」ケンジがコーヒーカップを手に取った。

「いろいろ話した。もちろんいっぱい慰めてくれたよ」

「そうか」ケンジは安心したようにコーヒーをすすった。「優しいいとこがいて良かったな」

 

 龍は小さな声でケンジに囁いた。「エッチもした」

 

 ぶ~っ! ケンジはコーヒーを噴き出した。げほげほげほっ! 「な、何だって?!」

「何? なに? どうしたの? ケンジ」ミカが小走りでやって来てケンジの隣に座った。

「お、お、お前、そ、そ、そんなこと……」

「だって、本当のことだもん」

「もしかして、」ミカが言った。「マユ姉を抱かせてもらったのか? 龍」

「うん。そうだよ」

「お、お前、真雪とつき合い始めて今日でまだ5日目なんだろ? ……、いつやっちまったんだ?」

「金曜日」

「早っ!」ミカが叫んだ。

「ってことは、つき合い始めて二日後じゃないかっ! このやろっ! !」ケンジは龍の頭をぐりぐりした。

「僕の心と身体を癒してくれたんだよ。マユ姉」

 

 ミカが呆れ顔で言った。「ものは言い様」

 

「って、何で僕とマユ姉がつき合い始めたことを知ってるの?」

「健太郎が教えてくれた」

「え? ケン兄が?」

「お前らが店の前でキスしてるのを目撃したんだとさ」

「み、店の前じゃないよ」龍は赤くなって言った。「少し離れた、路地だった」

「同じコトだろ」

 

 

 それからまもなくして警察の捜査が始まった。龍への聞き取り、健太郎の同級生で、かつて沼口に同じ目に遭わされた複数の元男子生徒の証言、理科室の捜査、押収された沼口のパソコンやデジカメの調査。

 

 そして沼口本人からの聴取。

 

龍は両親に付き添われ、自宅で聞き取りが行われた。その後、医師による診察と健康診断を受け、結局つごう三度の聴取が行われた。龍はありのままをはっきりと、自分の口で刑事に語り尽くした。

 中学校の理科室の捜査では、準備室から事件の際に使われたと思われるロープや硫酸の入った小瓶も押収されたらしかった。

 結果、沼口 洋容疑者(28)は、海棠 龍、その他数人の教え子に対する強制わいせつ致傷の罪で逮捕。

 

 勤務校を所管する市教育委員会は沼口を懲戒免職処分にした。

 

 

 約半月後の金曜日。海棠家のリビング。

 龍、ケンジ、それに健太郎と真雪がソファに座って語り合っていた。

「龍くん、よくがんばったね」

「うん。みんなのおかげ。ありがとう、ケン兄、マユ姉それに、」龍はケンジの方に目を向けた。「父さん、母さん。心配かけてごめんなさい」龍はぺこりと頭を下げた。

「何言ってるんだ。一番つらい思いをしたのは龍だろ」ミカがキッチンからやってきて龍の前にホットミルクの入ったカップを置いた。「それに、あたしたちがあんたに理科の勉強を勧めたわけだし……」

「父さんたちにも、責任の一端がある。すまなかったな、龍。ひどい目に遭わせてしまって……」

「父さんや母さんには責任はないよ」龍は笑った。

 

「警察の人の話では、」ケンジが口を開いた。「最初、沼口は容疑を否認していたらしいけど、証拠を次々に突きつけられて、結局認めたんだってさ」

「証拠?」真雪が訊いた。

「硫酸の小瓶の指紋、龍のズボンに開けられた穴、鑑定に回された龍のベルトにもヤツの指紋があったらしい」

「無理矢理ベルトを外されたんだ。あの時……」龍は絞り出すような声で言った。

「理科室の床からルミノール反応が出た、とも言ってた」

「そうか、だから龍の血液検査をしたんだね」健太郎が言った。

「そして決定的な証拠は、パソコンに保存されていた大量の生徒の写真」

「た、大量の?」

「そう。明らかにあの中学校の理科室だとわかる場所で、ハダカにされ、ロープや鎖、革のベルトなんかで拘束され、射精させられた後の哀れな姿の写真が大量に保存してあったらしい」

「うそっ!」真雪は口を押さえた。「そ、それって、まさかネット上に流出して……」

「その可能性は低い、ってさ」

「どうして?」

「ヤツは自分で楽しむだけのいわばコレクターだった。それに写真を見れば明らかに罪に問わそうなものばかり。もしそれをネットにアップしたりしたら、当局の捜査を受ける可能性大。児童ポルノなんとか法が適用されそうな写真ばかりだからね」

「『児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律』ってやつだね」

「よく知ってるな、健太郎」

「最近高校で習った」

 

 龍はため息をついた。「良かった……」

「その写真データは一台のデジカメで撮られたもの。そのデジカメはヤツの所有物で、その本体からはヤツの指紋しか検出されなかったんだ」

「確かに怪しいマニア、って感じだね」真雪が言った。

「許せないよ。カメラはそんなものを撮るためのものじゃない」龍が吐き捨てるように言った。

 

「ところで、真雪、」ミカが言った。

「なに? ミカさん」

「あなたうちの龍のどこが気に入ったの?」

「なっ! 突然何を言い出すかな、母さん」龍は赤面した

「逞しさと優しさ、かわいさもあるかな。一途だし。それに、ケンジおじによく似てシャイなところも」

「なんで俺に似たところが……」ケンジも赤くなった。

「あたしね、中学生の頃はケンジおじにとっても憧れてたんだよ」

「えっ? 本当に?」龍が顔を上げた。

「うん。本当」

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「まさか、」ミカがケンジを睨んだ。「ケンジ、あなた真雪に手を出したりしてないよね? 今になって『児童ポルノなんとか法』で警察にしょっぴかれるのはまっぴらだよ」

「ばっ! ばかなこと言うな! そ、そんなことするわけないだろ! 俺もたった今、初めて聞いたばかりだ」

「ほんとに何もされてないの? 真雪」

「残念ながらね」真雪は笑ってテーブルのアソートチョコレートに手を伸ばした。

「龍、あんたの恋のライバルは父親だってさ」ミカが面白そうに言った。

「ごめんね、ケンジおじ、今は恋愛感情、ほとんどない」真雪が笑いながら言った。

「助かった……」ケンジは胸をなで下ろした。

「でも、親戚のおじさんとしてはとっても好きだし尊敬してる」

「なんだ、面白くない」ミカが言った。

「どんな話の展開なら納得するんだよ。ミカさん」健太郎が言った。

「いやなに、伯父さんと姪の禁断の恋! 面白いじゃない」

「ほう」ケンジがミカをちらりと見て言った。「じゃあ伯母さんと甥の禁断の恋はどうなんだ?」

「う!」ミカは声を詰まらせた。そして健太郎も同様に顔を赤くしてうつむいた。

 真雪が不思議そうに二人の顔を交互に見た。「どうしたの? ミカさん。それにケン兄も……。顔、赤いよ、二人とも」

「いやあ、どうしたのかねー」ケンジが頭の後ろに両手をやって反っくり返って見せた。

 龍も話について行けずにそれぞれの表情を戸惑った様子で見比べた。

「もしそうなったら、面白いだろうな。って思ったんだよ」ケンジは軽いノリでそう言った。

「面白がるなっ!」ミカが叫んだ。「まったく、人をコケにしやがって……」

「わっはっは」ケンジは大笑いした。

 

「あの、ケ、ケンジおじ、」健太郎が恐縮したように言った。

「何だ? 健太郎」

「ちょっと二人だけで話したいことが……あるんだけど」

「ん? どうした」

「いや、ちょ、ちょっとね」

「なんだ、健太郎、いきなりおとなしくなっちゃって」ミカが言った。健太郎はミカの顔をちらりと見た後、すぐにうつむいた。

「わかった。じゃあ表を散歩でもしながら話すか、健太郎」

「う、うん。悪いね」

 真雪が立ち上がった健太郎を見上げて、不思議そうにほんの少し首をかしげた。

 

 

 街灯の下に蚊柱が立っている。

 

「いい天気だ。星がいっぱい見えるな。もう梅雨明けかな」ケンジが空を仰ぎながら言った。

「ケンジおじ、たぶん、もう知ってると思うけど、」

「ん?」ケンジは健太郎の顔を見た。

「お、俺、俺さ、去年、ミカさんと……」

「知ってるよ。ミカに童貞捧げたんだろ?」

「し、知ってたんだ……。ご、ごめんね、ケンジおじ……」

「なに、気にするな。どうせミカがお前をその気にさせたんだろ?」

「い、いや、たぶん俺がミカさんとエッチしたがってるのがミカさんに気づかれたんだと思う」

「ミカで良かったのか? 健太郎」

 健太郎は立ち止まった。「俺、ずっとミカさんに憧れてた。抱きたいってずっと思ってた。だから、俺、去年のハワイでのあの夜は夢のような時間だったんだ」

「良かったじゃないか。夢が叶って」

「ごめんなさい……」

 

「じゃあ、俺も」ケンジが健太郎の顔を見ていった。

「え?」

「健太郎もたぶん知ってることだとは思うが、」

「……」健太郎もケンジの顔を見た。

「お前は俺とマユの子どもだ」ケンジは真剣な目だった。

 

 自分を見つめるその深い瞳の色に健太郎はたじろいだ。そしてやっと言った。「知ってる」

 

 ケンジが大学一年目の冬、海棠兄妹がその甘く、熱い関係に終止符を打つことを決心した最後の晩、密かにマユミはケンジの子を宿した。その前日、マユミはケネスを半ば強制的に押し倒して想いを遂げた。その時に彼女はケネスの子も身に宿していた。そうしてそれから10か月後、健太郎と真雪の双子が生まれた。この双子は『異父双生児』。つまり、父親が違う双子の兄妹なのだった。

 

「いつか、きちんと俺の口から話さなきゃいけないと思ってたんだが……」

「いいんだ、ケンジおじ。俺、そのことで誰も恨んだりしてないから」

「すまん。許してくれ、健太郎」

「大丈夫。謝らないで。俺、その事実を去年ミカさんから聞いて、なんだかほっとしたんだ」

「え?」

「俺、ずっとあなたのことを特別な存在だって感じてた」健太郎は少し涙ぐんで口元に微笑みを浮かべて言った。声が少し震えていた。「事実を知って以来、俺、あなたとケニー父さんがますます好きになった」

「健太郎……」

「真剣な言葉で俺に打ち明けてくれて感謝してる、ケンジおじ」

 ケンジは健太郎の肩に手を置いた。「俺、ケニーの厚意に大いに甘えてるところがある。だから俺はあいつに対しては時々ちょっとした罪悪感を感じることがあるんだ」ケンジは空を仰いだ。

「ざ、罪悪感なんて感じる必要ないよ!」健太郎が大声を出した。「俺、ケニー父さんの子であることを誇りに思ってるし、父さんも俺のことちゃんと息子としてかわいがってくれてる。それで十分でしょ? ケンジおじが負い目を感じることなんかないよ」

「……」

「俺の方こそ、父さんとおじさん、両方に甘えてる気がする。父親が二人いる、って甘えてる」

「いいじゃないか、甘えても」

「もし負い目があるんなら、そのことと、俺のミカさんとのことで、お互い貸し借りなし。そういうことにしとこうよ、」そして言った。「……父さん」健太郎がケンジの手を取った。ケンジの頬を一筋の涙が流れた。

 

「俺、今も昔も、きっと将来もケンジおじのこと、大好きだよ」

 

 ケンジは涙を指で拭って言った。「俺もだ、健太郎」そして二人は固く抱き合った。

 

 

「あ、帰ってきた」玄関のドアが開く音を聞いて、龍が言った。

「ただいま。いやあ、夜でも外はやっぱ暑いわ。俺、顔洗ってくる」ケンジはまっすぐ洗面所に向かった。

 健太郎は元いたソファに座った。ミカと目が合った。ミカはいたずらっぽくウィンクをした。健太郎は小さくうなずいて微笑んだ。

「何の話、してきたの? ケン兄」

「え? いや、大した話じゃない」

「ちょっと気になる」

 健太郎は穏やかな表情で真雪を見た。「いつかちゃんと話すよ、マユにも」

「うん」真雪は微笑んだ。

 

 ケンジが戻ってきた。そして龍に向かって言った。「そうそう、今度の8月、また旅行することにしたから。シンプソン家と一緒に」

「え? 本当に?」龍の顔が一気にほころんだ。

「去年みたいに海外ってわけじゃないけどな」

「やったーっ!」龍は飛び跳ねた。

「今度は山。温泉付き」出発は8月3日だ。

「ケンジおじたちの記念日だよね」いたずらっぽく健太郎が言った。

 ケンジはちょっと驚いた顔をした。そしてミカを見た。ミカは微笑みながらケンジと目を合わせた。ケンジはすぐ真顔に戻って健太郎の耳に口を寄せて囁いた。

「お前の記念日でもあるだろ? 健太郎」

「うっ! ……や、やぶ蛇だったか……」

 ケンジがもう一度ミカを見た。ミカは笑った。

 

 白い壁の掛け時計のチャイムが鳴った。

「や、もうこんな時間だ」

「今日は二人ともうちに泊まっていくんでしょ?」龍が言った。

「そのつもりだよ」真雪が微笑んだ。

「やった、やったーっ!」

「い、いいのか? ミカ」

「ケネスとマユミの許可はちゃんと得てるよ。真雪が龍の部屋に泊まることも了承済みだったりする」

「ええっ?!」ケンジはうろたえた。

 ミカがケンジに耳打ちした。「ただ、子どもができたら責任取れ、とも言われた」

 

「やった、やったーっ!」龍は大はしゃぎした。

「じゃあ俺はここで寝るから。ケット貸してね、ミカさん」

「お前も気を遣うよな。健太郎」ミカは笑った。

「じゃあ、お休みっ」龍が威勢よく言って立ち上がり、真雪の手を取った。

「ちゃんと歯、磨けよ」ケンジが慌てて言った。

「わかってる」

「それがエチケットってもんだぞ」ミカが言った。

「余計な一言だっ!」ケンジがたしなめた。

 龍と真雪は手を繋いで階段を駆け上がっていった。

「あそこまであからさまで大胆なやつだったとはな……」ケンジがつぶやいた。

 健太郎がおかしそうに言った。「親に似たんじゃない? ケンジおじ」

「そうだな、ミカの染色体の成せる技だな」

「なんだって?」ミカがケンジを睨んだ。

「真雪も言ってただろ? 俺はシャイな性格。大胆で突っ走る性格はお前譲りだ。誰が見ても」

「じゃあ、今夜も突っ走ろうかな」

「え?」健太郎がミカを見た。

「何に突っ走るって?」ケンジもミカに顔を向けた。

「健太郎、今夜ここで、期待して待ってろよ」ミカはにやりと笑って健太郎を見た。

「ええっ?!」

「何なら、俺がここで寝ようか? ミカ。お前と健太郎が寝室でいっしょに寝ればいい」

「それじゃどきどきしないよ。禁断の恋はこっそりじゃないとね」ミカはそう言って健太郎にウィンクをして見せた。

 

 健太郎は真っ赤になって目をしばたたかせた。

 

 

「龍くん!」

「マユ姉っ!」

 自分の部屋で龍は真雪の背中に腕を回した。真雪もそれに応えて龍の首に腕を回した。「好き! 大好き! マユ姉!」そして龍は真雪に情熱的なキスを浴びせた。口を開き、舌を彼女の唇を割って入り込ませた。真雪は龍の舌に自分の舌を絡ませ、吸った。龍の手が真雪のTシャツの裾から背中を這い上がり、ブラのベルトのホックを捉えた。そして少し手間取ったが、すぐにそれを外した。

「龍くん、上手になったじゃない? 練習したの?」

「内緒」

「したんだ、練習」

「いいじゃない、そんなこと」

 龍は真雪のTシャツを脱がせた。真雪は両腕を上げてそれを手助けした。真雪の上半身をすっかり露わにすると、龍は真雪の乳房にむしゃぶりついた。「あ、ああん、りゅ、龍くん……」

 

 時間をかけて思う存分真雪の乳房の感触を味わうと、龍は自分のシャツを脱ぎ去った。「マユ姉、ベッドに横になって」

「うん」真雪は穿いていたタイトなジーンズのまま龍のベッドに仰向けに横たわった。それを見下ろしながら龍はハーフパンツを脱いで、黒のビキニショーツ一枚の姿になった。

「いい? マユ姉」

「うん。いいよ。脱がせてくれる?」

「もちろん」

 龍は真雪の足下にひざまずき、彼女の腰をジーンズ越しに抱きしめ、鼻を股間にこすりつけ始めた。

「やだ、龍くん、なんだか大胆になったね。まだ二度目なのに」

「僕、もう嬉しくてしょうがないんだ」

「嬉しい?」

「うん。こうしてマユ姉といっしょにいられることがさ」

「あたしもだよ、龍くん」真雪は両手を伸ばして龍の両頬をそっと包んだ。龍は真雪のジーンズの前のボタンを外し、ファスナーを下ろした。そして身を引きながら、ぴったりと張りついたそのジーンズを真雪の両脚から抜き去った。真雪は白いショーツ一枚になった。

 

 おもむろに身を起こした龍は、自分のショーツを脱ぎ去った。彼のペニスはすっかり大きくなり、鋭く天を指してびくびくと脈動していた。「ごめん、マユ姉、まだ見ないでね」龍は真雪に背を向けた。しばらくしてかさかさと音がした。

「龍くんも買ったんだ、それ」

「僕、これも練習したんだ」

「ほんとに?」

「うん。好きな人といっしょにイきたいから……」

「龍くん、大好き」真雪は背を向けていた龍を後ろからぎゅっと抱きしめた。真雪の唇が龍の首筋を這った。「ああ……」龍はぞくぞくとした快感に耐えた。「マユ姉……」

 

 再び龍は真雪を横たえた。

「僕ね、教えてもらったんだ」

「え? 何を?」

「コンドーム着けたら、自分の唾液でしっかり濡らしておけって」

「誰から?」

「父さん」

「えー? おじさんったらそんなこと息子に教えてるの?」

「マユ姉だって、ケニーおじさんからいろいろ教えてもらったんでしょ?」

「ま、まあね」

 龍は笑った。「そうすれば女のコが痛い思いをしないからって」

「おじさんも優しいね。さすがあたしが憧れた紳士だね」

「本当に父さんから何もされたりしなかった?」

「妬いてるの? 龍くん」

「ちょっとだけ」

「大丈夫。っていうか、龍くん心配しすぎだよ」

「だよね」龍は安心したように笑った後、真雪の乳房をさすり、また口で吸い始めた。

「ああ、あああん……」真雪は喘ぎ声を上げ始めた。そして上になった龍の背中に腕を回し、力を込めて抱きしめた。

 

 真雪の身体が細かく震え始めた。

 

「どうしたの?」龍は口を離して、少しうろたえて言った。「怖い? 僕、乱暴だった?」

「ち、違うの、あ、あたし、もう、感じてるの、龍くん、あたしに……、入れて……」

 龍はごくりと唾を飲み込み、起き上がって自分の指を舐めてはコンドームをかぶせた自分のペニスに唾液を塗りつけ始めた。

「大丈夫、龍くん。もう十分に濡れてるから、あたし……」

「マユ姉……」

「脱がせて、お願い、早く脱がせて……」

 真雪のショーツは、谷間の部分がしっとりと濡れていた。龍は焦ってそれを脱がせた。そしてそのショーツを手に持ち、自分の鼻にこすりつけた。「マユ姉!」

 

 真雪はゆっくりと両脚を広げた。龍は、コンドームがかぶせられ、大きく怒張したペニスを真雪の谷間にあてがった。

「いい? マユ姉、大丈夫?」

「うん、龍くん、来て、平気」真雪は目を閉じたまま言った。

 龍はゆっくりと腰を前に動かした。少しだけ先端が真雪の谷間に入り込んだ。「んっ!」真雪の苦しげな表情を見て、龍は慌ててペニスを抜いた。「ご、ごめん、マユ姉、痛い?」

「龍くん、いいの。大丈夫。痛くないから、遠慮しないで」

「う、うん」

 龍はまた先端を谷間にあてがった。ぬるりと先端が真雪の中に入り始めた。「あああ……」真雪は顎を突き出して喘いだ。「龍くん、龍くん……」

 真雪が腰を突き出した。思わず真雪の身体の奥まで押し込まれた龍のペニスはじわじわと締め付けられ始めた。「あ、ああ、マユ姉!」

 

「動いて、龍くん、あたしの中で動いて!」

 龍は腰を前後に動かし始めた。

「マユ姉、痛かったら、言って、すぐにやめるから」

「気持ちいいよ、龍くん。そのまま……。あ、ああああ……」

 龍はさらに激しく腰を動かした。「ああ、ああああっ! マ、マユ姉、ぼ、僕っ!」

「イくの? 龍くん、あたしも、もうすぐイけるよ。い、いっしょにイこう」

「うっ、くっ!」龍は汗だくになって激しく身体を揺すった。

「あ、熱い! 中が、熱い、熱いよ、龍くん!」真雪も龍の動きに合わせて身体を揺すった。

 

 龍の身体が真雪にのしかかった。龍は手に持った真雪のショーツで自分の口と鼻を押さえた。そしてそのショーツごと、真雪の口に自分の唇を押しつけた。「んっ、んっ、んっ!」

 真雪は脱がされた自分のショーツ越しに龍の唇に口を塞がれ、呻いた。「んんんんっ! んんっ!」

 

 はあっ! おもむろに龍は身体を起こした。「イくっ! イく、マユ姉! イっちゃうっ!」びくびくびくっ! 龍の身体が小刻みに震え始めた。

 

「ああああっ! あ、あたしも、イ、イっちゃう! も、もう! りゅ、龍くん、龍くんっ!」がくがくがく! 二人の身体が同じように痙攣し始めた。

「出る! 出ちゃうっ! マ、マユ姉っ! んんんっ! ぐ、ぐううっ!」龍のペニスが激しく脈動し、彼の身体の中に溜まっていた熱い真雪への想いが勢いよく噴出し始めた。

「あああああっ! 龍くんっ!」真雪の身体が大きく仰け反った。

 

 はあはあはあ……二人は身体を重ね合わせたまま大きく肩で息をしていた。龍の背中から脇に、汗が流れ落ちた。龍も真雪も、お互いの速い鼓動を聞きながら、満ち足りた気分で長い時間抱き合っていた。

 

 

「龍くん、」

「なに? マユ姉」

「あなたといっしょにあたしもイけたよ。上手だった。とっても……」

「ほんとに? 良かった……」龍は無邪気に微笑んだ。

「でも、ほんとはあたしの中に出したいでしょ?」

「え?」

「その方が気持ちいいよ。きっと」

「で、でも、赤ちゃんができちゃうよ」

「あたしたちがずっとこのままつき合ってて、大人になって龍くんがあたしにプロポーズする日が来たら、」

「夢みたいだ……。そうなったら」

「あなたの赤ちゃんが欲しいな。あたし」

「僕とマユ姉の赤ちゃん……。ホントに夢みたいだ。そうなったらいいな……」龍は真雪の胸に顔を埋めた。

「でも、まだ龍くんが赤ちゃんみたいだから、ずっと先になりそうだね」

「うん。僕まだマユ姉に甘えたい年頃」

 真雪は笑った。「かわいい」そして短くキスをした後、龍の目を見つめて真雪は言った。「好き。龍くん」

「僕も」

 

 真雪は自分の乳房に顔を埋めたままの龍の髪をそっと撫でながら言った。「あの写真、ずっと飾ってくれてるんだ」

「うん。もちろん。だって、僕がマユ姉を撮った初めての写真だから」

「すっごくよく撮れてるよね」

「ありがとう」

「写真撮るの、好き?」

「うん。今度、誕生日に父さんからもっといいデジカメ買ってもらうことになってるんだよ」

「そう、良かったね」

「そしたら、またマユ姉をいっぱい撮ってあげる。いいでしょ?」

「ほんとに? 嬉しい」

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