Twin's Story 外伝 "Hot Chocolate Time" 第3集第2話 忘れ得ぬ夢~浅葱色の恋物語~ サイドストーリー

神村と青柳 一線を越えた上司と部下

!!Warning!! Homosexuality expression

!警告 真性BLモノです。興味がない人は閉じましょう。


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Nプロジェクトのトップモデル神村と青柳

 神村照彦は『Nプロジェクト』に就職して、モデル業と営業課の仕事を見事に両立させていた。取引先の事業所を訪ねる度に、モデルとしての神村の偉業が称えられ、励まされた。彼がモデルを務めたメンズファッションは、確実に売り上げを伸ばしていて、その業界ではもはや引っ張りだこの男だった。また彼には多くの女性ファンが存在し、彼の姿が載ったカタログや折り込み広告は、そのファンたちによって収集され、手に入りにくい貴重なものに至っては、高値で売買されるといった現象まで起きていた。


 働き始めて一年が過ぎた頃、彼は営業部の部長に昇格していた。しかし彼は外回りを好み、部下を連れて一日のほとんどの時間、会社から出ていることが多かった。

「神村さんって、ほんとに外を歩くのが好きなんですね」

 いつも一緒に行動している神村の腹心とも言えるのがこの青柳だった。眉とうなじが隠れる程の長髪を栗色に染めた26歳。彼は半年前に入社した時から営業部に配属され、同時に若手を代表するモデルとして精力的かつ献身的に働いていた。

「机に向かってじっとしているのは性に合わないんだ」神村はにっこり笑った。「君だってモデルの仕事が忙しいんだろ? 無理して僕につき合わなくてもいいのに」

「いえ、」青柳は照れたように笑った。「俺、神村部長と一緒にいるのが好きなんです」

「そう」神村はまた白い歯を見せて笑った。

 青柳は、その上司の笑顔が大好きだった。その細い目を向けられると気持ちが温かくなり、どんなときでも心癒やされる気がした。


 二人はその日一軒目の企業訪問の後、大通りの歩道を歩いていた。

「暑いですね、今日も」青柳が汗を拭きながら言った。

「そうだね」神村も困ったような顔をその青年に向けた。「どこかで涼む?」

「いいんですか?」

 神村はまたにっこり笑った。「今日は時間に余裕があるからね」

「じゃあ俺の行きつけの店に行きましょう、部長」青柳が少し頬を赤く染めて言った。

「いいよ」


「ちょっと隠れ家っぽい喫茶店なんですけど、ここのカフェモカ、めっちゃうまいんです」

「カフェモカ? 何だい、それは」

「チョコレート風味のコーヒーです」

「へえ、初めて聞いた」

 青柳は神村を連れて狭い路地に入っていった。

「表通りじゃないんだね」

「言ったでしょ、隠れ家っぽい所だって」青柳は笑いながら言った。

「怪しげな店じゃなかろうな?」

 青柳は肩をすくめた「ご心配なく。普通の喫茶店です」


 神村がそのビルの谷間の薄暗い路地を、きょろきょろしながら歩いていた時、前を歩いていた青柳が急に振り向き、足を止めた。神村もとっさに立ち止まった。

「神村部長……」

 青柳はあまり見せたことのないまじめくさった顔で神村と向き合った。

「ど、どうしたの? 青柳くん」

 神村がそう言った時、青柳は出し抜けにその上司を背中に腕を回して抱きすくめた。

「えっ?!」

 至近距離で神村の目を見つめながら、青柳は小さな声で言った。「俺、部長が好きです」

「あ、青柳くん」神村は驚いたように目を開いた。

 青柳の唇が、神村のそれに宛がわれた。そして焦ったようにその青年は上司神村の唇をむさぼるように求めた。

 その時、神村は自分の身体の奥から熱い脈動が全身に広がり始めたことにひどく狼狽していた。



 モノトーンで統一された部屋だった。天井から下がったシャンデリア風の照明が大きなベッドをぼんやりと琥珀色に照らしている。

 スーツ姿のままベッドに腰掛けた神村の前に立った青柳は、ひどく申し訳なさそうな顔をしてその上司を見下ろした。

「すみません……神村部長。こ、こんな所に連れ込んじゃって……」

 神村は青柳を見上げて緊張したように微笑んだ。「い、いや……」

 青柳は神村と並んでベッドに腰を下ろした。そして自分の膝に目を落として言った。「どうして拒まないんです?」

「どうしてかな……僕にもよくわからない……」

 青柳は顔を横に向けた。神村は頬をほんのりと赤く染めていた。

「俺、一緒に仕事してるうちに、貴男がどんどん好きになってました」

「それって、君は、その……ゲイだってこと?」

「いえ、女の子とつき合ったこともあるし、セックスの経験もあります。だから俺、たぶんバイだと思います」

「そうか」神村はふっとため息をついた。「僕も……そうかもしれないな」

「え?」青柳は意外そうな顔を神村に向けた。

「だってさっき君にキスされて、女性とそうする時みたいにどきどきして身体が熱くなっていたから……」

 青柳が恐る恐る訊いた。「いいんですか? 部長」

 神村は小さく頷いた。「僕は初めてだから……うまくできないかも……知れないが」そして頬の赤らみを強くした。


 青柳はスーツ姿の神村をそのままベッドに押し倒し、我慢できないように唇を重ね合わせた。神村も緊張したようにぎゅっと目を閉じてそれに応えた。


 青柳と神村は身体を離した。二人は焦ったように上着を脱ぎ、ネクタイを外した。青柳は神村を仰向けにすると、四つん這いで覆い被さり、シャツのボタンを外していった。

 神村の上半身が露わになると、青柳は泣きそうな顔で言った。「俺、部長の身体に欲情するんです」

「そ、そうだったの?」

「俺も貴男の載ったカタログやチラシ、全部集めてます。その、」青柳は声を小さくした。「その写真見ながら俺、一人でやってました」

「僕の身体で……」

「ごめんなさい、部長、貴男をそんな目で見てて」

 神村はふっと笑った。「嬉しいね。何だか。ちょっと複雑な気持ちだけど」

 青柳は自分もシャツを脱ぎ去って横たわった神村の身体を抱きしめた。「好きです、部長」


 青柳はベルトを外し、スラックスを脱ぎ去った。

「おや?」神村が顔を上げた。「それって、あの下着じゃない」

 青柳が穿いていたのは、神村のカタログで最もきわどい黒いTバックのショーツだった。

「これ穿いてると、貴男に抱かれてる気分になるんです」青柳が赤くなって言った。

 それから青柳は神村のスラックスを脚から抜いた。神村はぴったりしたボクサーショーツを身につけていた。

 ああ、と熱いため息をついて、青柳はその膨らみに顔を擦りつけた。「夢だった……こんな瞬間が実際にやって来るなんて……」

「青柳くん……」

 青柳はいきなりそのショーツを下ろし、飛び出した神村のものを柔らかく握った。

 あっ、と小さく叫んだ神村は肘を突いて身体を起こした。「あ、青柳くん!」

 青柳は上目遣いで神村を見つめ、照れくさそうに言った。「部長、咥えてもいいですか?」

「えっ? あ、あの、僕のそれを、君が?」

「ダメですか?」

「す、すごく緊張するな……」神村はごくりと唾を飲み込み、元通り身体を倒して目を閉じた。

 

 青柳は自分のショーツを脱ぎ去った後、神村の身につけていた最後のものを脚から抜いた。

青柳は神村の一糸纏わぬ姿を見下ろしてああ、と大きなため息をつくと、その両太股を腕で抱え、いきり立って透明な液を漏らし始めていた神村のものに舌を這わせた。

 んんっ、と呻いて神村は眉を寄せた。彼の息はどんどん荒くなっていった。


 青柳の口が神村のペニスを吸い込み、舌で舐めながら上下に動いた。

「ああ……青柳くん! も、もう限界だ!」神村は顎を上げて叫んだ。

 口を離した青柳は、枕元にあったローションを手に取り、神村の脚を上げさせると、そのバックの秘部に塗りつけた。

「えっ?!」

 青柳は焦ったように自分の大きく脈動しているペニスにもぬるぬるとそれを塗りたくり、神村の閉ざされていた場所に、まず右手の中指をするりと挿入した。

「ううっ! あ、青柳くん!」

「部長、力を抜いて下さい」

「そ、そこはだめだ! や、やめてくれ!」

「すみません、部長、もう止められません、俺」

 青柳は大きく神村の脚を抱え上げ、硬くなったものを神村のバックに宛がったかと思うまもなく、ぐいっと腰を突き出してそれを彼の身体の中に埋め込んだ。

「いっ!」神村は激しく身体を仰け反らせた。「だ、だめだ! 青柳くん! やめてくれっ!」

 青柳は構わず腰を荒々しく前後させた。


 青柳が汗だくになって身体を揺するたびに、神村の身体も熱くなっていった。そして青柳の唾液で光るペニスはさらに大きさと硬さを増し、びくびくと脈動した。

「部長、気持ちいいです。貴男の中、めっちゃ気持ちいい」

 青柳は恍惚の表情で汗だくになりながらダイナミックに動き続けた。

「青柳くん! な、何だか僕も、ああっ!」

 神村は息を荒くしながら苦しそうに歯を食いしばっていた。


「青柳くん! もう出、出そうだ! あ、ああああ……」

「神村さん、イってください。俺といっしょに、イってくださいっ!」

 青柳はぐうっ! と喉で呻いた。それと同時に深々と差し込まれていた彼のペニスが膨張し、次の瞬間身体の中から熱いマグマが神村の体内にどくんどくんと噴出し始めた。

「ああ! 熱い、熱いっ!」神村も激しく身を捩らせた。「出、出るっ! 僕も出るっ!」

 びゅびゅっ! という音を立てて、神村も激しく射精を始めた。

ううっ、と呻きながら神村はその白く熱い液を勢いよく飛ばし続け、それは彼の頬や胸にまつわりついた。

 神村も青柳も、しばらくそのままの状態ではあはあと荒い息を繰り返していた。

 やがて青柳のものが神村の中から抜け、その若者はタオルと手に取ると、神村自身が発射してその身体に残されていた白い液を拭き取った。

「神村さん……」青柳はそうつぶやくと、ゆっくりと彼の身体に覆い被さり、腕を回して抱きしめた。「ありがとうございます」

 そして二人はどちらからともなく顔を近づけ、ゆっくりと唇を重ね合わせた。



「なかなかじゃない! 素敵よ、二人とも!」

 絵里子が大興奮して言った。

 神村の自宅、子どもたちが寝静まった後、訪れていた青柳と一緒に神村夫婦はそのビデオを見終わったところだった。

  神村も青柳も顔を真っ赤にしてコーヒーを飲んでいた。

「売りに出したら大評判になるんじゃない?」

「じょ、冗談やめてくれよ」神村が慌てて叫んだ。

「ご、ごめんなさい、ほんとに」青柳が言った。「奥さんがいるのに、俺、神村部長にあんなことしちゃって……」

「あなた、よく承諾したわね、この企画」

 神村はばつが悪そうに眉尻を下げた。「社長に台本渡された時は、断固拒否したんだけどね……」

「あなたたちのファンの間で、噂になってるんでしょ? 二人がそういう関係だったら素敵なのに、って」

「そ、そうらしいね」神村はカップを口に運んだ。

「青柳君も若手モデルのトップだし、その身体に魅せられている女性ファンもたくさんいるらしいじゃない」

「そ、そうなんですけどね……」青柳は照れたように頭を掻いた。

「いつもあなたたちが一緒に行動してるから、そんな噂も立つんでしょうね。ほんとに公開したいわね、これ」

「社長も調子に乗っちゃってさ、上司と部下の情事シリーズ、とか言ってあといくつか台本を準備してるらしい」

「ほんとに? すごい。できあがったら、また見せてね」

 神村は怪訝な顔をした。「君は平気なのか?」

「相手が女性だったら私、許さなかったわ。でもかっこいい青柳君が相手だ、って聞いたから楽しみにしてたのよ」

「普通じゃないだろ、男同士で愛し合うんだよ?」

「普通じゃないからどきどきするんじゃない。続編も早く作ってね」

「まったく……」神村と青柳はそろってコーヒーをすすった。


「っていうか、」絵里子が訊いた。「あなたたちは抵抗なかったの? 私あなたにそんなシュミがあるなんて知らなかった」

 神村は申し訳なさそうな顔をして言った。「抵抗はあったさ、ものすごく。でもずっとモデルやってるから、割り切って演じればいいか、って思って受けることにしたんだ。この企画」

「青柳君は?」

「俺、実際にたぶんバイです」

「そうなの?」

「だって部長のことを思うと胸が熱くなりますもん。昔、彼女とつき合ってた時と同じ症状」

「へえ……」神村は青柳を横目で見た。

「だから、俺はけっこうマジで気持ち良かったです。身も心も」

「な、何だよ、身も心も、って」

「あなたはどうなの? 青柳君のことはやっぱりただの部下?」

 神村は言葉を選びながら言った。「実際に青柳くんに抱かれたら、こういうのもアリかも、って思ったね。彼のキスも肌も、すごく、なんかこう……気持ちいいんだ。妻である君への気持ちとは違うタイプの恋愛感情は湧いてきたね、確かに」

 絵里子はにこにこしながら言った。「相手が青柳君だったからじゃない? それって」

「それはある」神村は背筋を伸ばしてまじめな顔をした。「僕はたぶん他の男性と抱き合いたいとかキスしたいなんて思わないだろう」

「そ、そうなんですか?」青柳が顔を上げた。

「特別な部下だからね、君は」神村は笑った。

「神村部長……」

 青柳はひどく幸せそうで切なげな微笑みを浮かべた。


――the End


2015,3,28


その後制作された神村と青柳のゲイビデオのクライマックスシーン